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消費者熱狂! 日本一お客思いのスーパー 「オーケー」

ビジネス進化論   ~成功するビジネスモデルの法則~
2009/08/19 第 7号 ━━━


顧客満足を向上させる」とよく言われますが、それを実践し、業
績に繋げることは容易なことではありません。 特に、一般消費者に
日々相対している小売業では、毎日が挑戦となることでしょう。 こ
れからご紹介する事例は、「信頼感」というキーワードを元に、成長
を続けているスーパーの事例です。

◆創刊号で、実在の企業ではないが、故伊丹十三監督の「スーパーの
女」という映画に出てくる「正直屋」というスーパーを事例として取
り上げた。

◆スーパーの名前は「正直屋」。 宮本信子演じる主人公が、あると
き近隣にオープンした安売り日本一を歌い文句にする「安売り大魔王」
という後発のスーパーに客を取られてしまう。

◆そこに対抗するために、津川雅彦扮する幼馴染みの経営者を支えな
がら、お店の改革に着手し、やがて遠のいていったお客を見事取り戻
すというストーリーが描かれていた。

◆この架空の「正直屋」が、実際にあったのだ。 そのスーパーの名
前は、「オーケーストア」。 首都圏を中心に56店舗を展開し、イオ
ンやイトーヨーカ堂などの大手が赤字の中、10年連続増収増益の優良
スーパーである。

◆テレビの放映で観た筆者は、早速、新用賀店に出向いてみた。 一
見何の変哲もない普通のスーパーのように見えるが、店内は違ってい
た。 以前よく米国で訪れていた、売上高40兆円、全世界で8000店舗
を展開する世界最大の小売ウォルマートの店内とそっくりだったのだ。

◆陳列棚の上にも段ボールのままでうず高く積まれた商品の山。 販
売フロアーのスペースも在庫のために有効利用している。 また、至
る所に経営方針である「高品質・Everyday Low Price」の張り紙が張
ってある。 「Always Low Prices」を標語とするウォルマートとこれ
らのやり方は酷似している。

◆特徴1.「安さ」。 このスーパーでは、どの商品も5~6割引は当
たり前で、商品によっては8割引というものもある。 確かに安い。
スーパードライ350ml缶などは何と167円だ。

◆特徴2.「特売をしない」。 ウォルマートもそうだが、毎日が特売
だそうである。 特売をしないから、それを告知するチラシというもの
が無い。 代わりに、「オーケー商品情報」と呼ばれる価格表と入荷情
報が書かれた紙が店内に置いてあるだけだ。 

◆特徴3.「品揃えが豊富」。 例えば、お味噌だけでも50種類あった
り、専門店にしか置いていないようなソースなどもある。 激安店にも
関わらず、品揃えが豊富なのである。

◆特徴4.「正直な情報提供」。 オネスト(正直)カードと呼ばれる
カードを店内に張って、そこに普通なら隠すような情報をお客に提供す
る。 たとえば、「このりんごは、触感・歯ごたえが良くないのでお勧
めできません」とか、「このいちごは、最盛期に比べると甘味が薄く美
味しくありません」とか、「メーカーの原材料高騰のため、XX月ZZ日か
ら値上がります。 値上げ前に購入ください」といった情報だ。

◆特徴5.「細かい気配り」。 食肉フロアーに行くと、目につくの
が、トレーの無い、ビニール袋だけで包まれたお肉。 冷蔵庫の中で
かさばらないし、ごみも出ないとお客に好評だ。 また、古い商品に
は、一目で判るように3%割引シールが貼ってあるので、お客はいちい
ち、商品の賞味期限を見る手間が省ける。


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■■ お客の心を掴んで離さないその仕組みを読み解く!

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◆社長の飯田氏の父親は、酒問屋を経営していた。 その父親から学
んだ理念は「至誠 天に通ず」というもので、自分や人に欺かず、客
に誠意を持って接していれば、結果は自ずとついてくるという教えで
あった。

◆飯田社長の兄弟の中には、兄は居酒屋「天狗」の経営者、弟に、あ
の日本最大の警備会社セコムの経営者がいる。 皆、この理念を父親
から叩き込まれて育ったという。

◆オーケーストアの経営の原点は、突き詰めていくとこの理念にあり、
そこから分かりやすい標語として降りてきたのが、「高品質・Everyday
Low Price」ということになる。

◆お金儲けの前に、まず「どうすればお客の支持・信頼を得ることが
できるか?」であり、 そのために飯田社長が考えたのは、「品質がい
いものを安い価格で提供すること」を最低ラインとし、実行に移した。

◆品質については、野菜などどうしても長雨などで、低品質でかつ高
価格となることもあり、悩んだ末に考えたのが、オネスト(正直)カ
ードを用いて、正直に情報を提供する方法だった。

◆そういえば昔、町の八百屋さんでは、母に「長雨のためこの長ネギ
は悪いよ。 もうじきいいのが入るから、すき焼きそれからにしたら」
といった類の会話がよくなされていた。 オネスト(正直)カードは、
昔の、お客とお店の良き信頼関係を生みだす秘訣なのである。

◆圧倒的な低価格を生みだす仕掛けは、価格競争力の強い売れ筋商品
を原則的には仕入れずに、2番手の製品を大量に仕入れるというもの
だ。 牛乳なら「明治」ではなく「森永」を、パスタなら「ママー」
ではなく、「オーマイ」を、醤油なら「キッコーマン」ではなく「ヤ
マサ」をといった具合である。 

◆コトラーの競争地位別戦略理論では、2番手のチャレンジャーは、
1番手のリーダーに対抗しようとして、市場占有率拡大、1番手奪回
を狙って、リーダーと差別化をするために思い切った低価格を出して
くることがあるとする。 オーケーはこれをうまく活用して、仕入値
を圧倒的に下げさせている。

◆チラシを打たないために、膨大な広告宣伝費が削減されたことも低
価格に大きな効果を与えている。

◆また、特売をしないことで、売れ行きの波がなくなり、正確な予測
が可能となり、自動発注システムによって在庫が大幅に削減でき、コ
スト負担が少なくなった。 以前は、店単位で発注をかけており、常
時2~3週間分の在庫を保有していた。 

◆オーケーでは、人件費、広告・宣伝費、物流費、家賃などの全ての
経費を売上高で割った数字、すなわち総経費率にこだわっている。 
ウォルマートやカルフールが大きく成長したのは、この総経費率が
15%を切ったころからだという。 イオンやイトーヨーカ堂は、それ
ぞれ21.1%と24.7%であるのに対して、オーケーは何と14.5%と手本
にしているウォルマートを下回っている。 オーケーの収益構造は、
日本の大手小売とは全く違い、限りなく世界の大手小売のそれに近い
のだ。

◆さらに、信頼を保つ仕組みも存在する。 オーケーでは、「お客様
に得をして頂く」という発想ではなく、「お客様に損をさせない」と
いう点に重きを置く。 というのも、「得する」というのは、そもそ
も何に比べて得か比較しがたく曖昧であるのに対して、「損しない」
というと、他店より高くなければ絶対損することはないと考える。常
に損はしないということを続けることによって、熱烈な信頼感を生み
だす。

◆そのために、常に競合店の価格を調査する専門子会社をもっており、
スーパーでは珍しい地域最安値保証を行っている。

◆また、なぜ特売をしないかというと、お客様との信頼感を維持する
ためである。 特売をやるとなると、「来週の月曜日から値段が下が
るので、今は買わないで」と説明しなければ、お客様に損をさせるこ
とになり、正直ではないし、その間商品は売れなくなってしまう。

◆また、ご意見カードに、お客様に自由に意見を書いてもらって、そ
れを飯田社長は毎翌朝全てに自ら目を通し、必ず数日以内に担当者か
らお客に結果を連絡している。

◆映画「スーパーの女」の正直屋のビジネスモデルから学べる3つの
ことを、オーケーストアのケースと重ねてみると以下のようになる。

1.顧客志向・現場主義:
  「お客様には絶対に損をさせない」という徹底した顧客志向と
  オネスト(正直)カードやご意見カードによる現場における情報
  提供・収集の実践。
2.情熱をもったリーダーの存在(主人公)と明確なビジョン:
  (こうあるべきという誰もが理解しやすい方向性)
  飯田社長というカリスマ性をもった強力なリーダーの存在と、
  「至誠 天に通ず」という崇高な理念を背景としたわかりやすい
  経営理念である「高品質・Everyday Low Price」とスローガンで
  ある「お客様に損はさせない」の存在。
3.既存の業務プロセスの見直しと改革(改善ではない)
  総経費率の徹底した見直しとそれに適合する業務プロセスの確立。

情報ソース:12chカンブリア宮殿2009.08.03
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■■ 今回の学び ■■
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よく顧客志向とかいいますが、真に顧客志向を貫くには、ここまで覚
悟して真剣に取り組まないといけないのかと驚かされたのが、このオ
ーケーストアの事例です。 漠然と顧客志向でいくとか、顧客満足を
向上させるということではなく、具体的にお客に何をどのように満足
して頂くのかを突き詰めるということが大事なことだと思います。

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■■ 編集後記 ■■
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オーケーストアの新用賀店の駐車場は、BMWやベンツなど高級外車が
多く駐車しており、フロアーにもお金持ちのマダム風の買い物客が多
く見受けられました。 例え金持ちであろうとなかろうと、人間誰し
もが、実は品質が良くて安いものを安心して買いたいというシンプル
な購買動機があるだけなんだなと実感しました。

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