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メールマガジン(1) それでも世界で勝つ。 日揮「暴動のパプア」にひるまず

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■■   優良事例で学ぶ「成功するサービスモデルの法則」
■■    ~ サービスサイエンス的思考法で探る ~

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 第一号 ━━━

◆こんにちは。現役の事業開発・強化コンサルタント兼サービス
サイエンティストの三宅信一郎です。

◆成功しているサービスモデルには必ず成功の法則が存在します。
サービスサイエンス的アプローチを用いて、そのサービスを観察し
モデル化することで、その特徴を可視化したいと思います。

◆そして、そのサービスを成り立たせている論理を明確にし、より
高い価値を提供するサービスとは何なのかといった本質を読者の皆
様と探求しながら共有していきたいと思います。

◆その結果、日本のサービス分野において、より高い価値を提供す
るサービスがひとつでも多く現れて、より快適な世の中になればい
いなと思っています。

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■■  それでも世界で勝つ。 日揮「暴動のパプア」にひるまず

━━━━━━━━━ 情報ソース:日経BP 2009.06.15 /P21 ━━━━

◆日揮は、原油開発、石油精製、ガス開発、石油化学、発電、原子
力、医薬品、食品等の分野を中心として活躍する国際的な総合エン
ジニアリング会社で、2008年の売上高は約4600億円に達しています。

◆数多くの新興国で、プラントや社会インフラの建設プロジェクト
に日夜従事しているグローバル企業です。

◆最終的に顧客に提供するものが、プラントがいわゆる建設物とい
うハードではありますが、サービスサイエンス的見地からこの会社
を見ますと、サービス業と位置づけることができます。

◆現地の調査を行い、プラントを設計・施工し、建設に必要な資材
や人材、燃料などありとあらゆるものを世界から調達して、キーを
ひねればすぐに稼働できる状態に仕上げて発注先に引き渡すという
一連のサービスを提供する巨大サービス業と言えると思います。

◆さて、サービスが顧客から高い評価を受けるためには、提供する
サービスの品質を高めなければいけません。 それでは、サービス
の品質とは何でしょうか?  「顧客はサービスを買っている」
(諏訪良武氏著(ダイヤモンド社刊))という本によると、サービ
ス品質というものを次の6つに分解しています。

正確性、迅速性、安心感、柔軟性、好印象、共感性の6つの評価
軸でサービス品質を評価してみると、あるサービスの品質がなぜ高
いのかが見えてきます。

◆どんなサービスもまずは正確でなければ話になりません。 次に
迅速性です。 世の中のビジネススピードが高速化している昨今、
サービスも迅速に提供されなければなりません。 迅速性は、時間
という客観的な物差しで測ることができるので、評価を左右します。

◆次に、この会社あるいは人に任せておいて心配はないという安心
です。 それから、柔軟性です。サービスはモノと違って顧客の
要求に臨機応変に柔軟に対応することが求められます。 次に好印
も重要です。 挨拶もしない、にこりともしないスタッフには、
顧客は気分を害してしまいます。 そして最後に、共感性です。 
顧客が欲していることを悟るということです。

◆このようにサービスのバリューを高める要素を常に押さえて、サ
ービスをデザインし提供していくと、その品質に大きな欠陥が生じ
るということが少なくなり、品質にブレがなくなると思います。

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■■  強い現場力。 それは「権限委譲」と「教育」から

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◆日経BPの記事「暴動のパプアにひるまず」では、日揮が英石油
メジャーBPから受注した、パプアニューギニ島に建設した巨大液化
天然ガス基地建設プロジェクトにおける奮闘物語が綴られています。

◆5年間で1万人が働いた、総額3000億円の屈指の難工事といわれ
たそのプロジェクトを納期通りに成功させたのは、現場従業員の執
念に後押しされた現場力でありました。

◆工事が遅れれば遅れるほど給料をもらえる期間が延びるから、働
く労働意欲が低いパプア人。 ジャワ人の現場監督が強制的に働か
せようとすると、1000人規模の大暴動に発展し、投石や事務所荒ら
しが始まりました。

◆これを、現場工事の総責任者である日本人が、「ノーワーク・ノ
ーペイ(働かないものには給料を払わない)」という方針を一歩も
譲ることなく徹底的に貫き通し、無法地帯の現場に徐々に秩序を埋
め込んで、納期を死守しました。

◆もうひとつの問題が噴出しました。 それは、納期が大幅に遅れ
る可能性が出てきた「バルブ事件」です。 地元の鋳物会社から調
達した蒸気やガスの配管の調整弁(バルブ)1600個のうち4個に不
具合が発生し、蒸気が漏れだしました。

◆不良品だけを交換すると主張する地元の会社の申し出に応じて、
1600個のバルブをひとつずつ取り外して品質検査をしていたら、工
事は半年以上遅延することが判明しました。 現場の判断は、1600
個全てを欧州などの信頼できる供給先から代替品を購入するという
ものでした。

◆この決断によって、すぐに本社の購買部門が動き出し、チャータ
ー機で代替品を現場に送りこみ、現場では300人の専属チームを立
ち上げて、24時間体制でバルブを交換しました。 その時の追加費
用は15億円にも上りましたが、工事の遅延は1.5か月で済んだので
した。

◆発注先であるBPの現場責任者が、「多くのプラント会社と仕事を
してきたが、これほど仕事への忠誠心や使命感がずばぬけた会社は
見たことがない」とのコメントを残したそうです。

◆この事例に触れて、先述しました6つのサービス品質の軸を考え
てみますと、この建設現場では、正確性、迅速性、安心感、柔軟性、
好印象、共感性
の6つの軸の全てを満足していると言えるかと思い
ます。

◆特に、プラント建設における生命線ともいえる納期の正確性に対
しては、現場が、共感性を発揮して顧客の心配を把握し、現場の
速かつ柔軟
な判断と行動力で、正確な納期を死守したのでした。そ
の結果、日揮に任せておけば大丈夫だという顧客からの絶大な安心
感と好印象
を獲得したのでした。

◆この高いサービス品質を発揮した現場力には、ある日揮の企業風
土の存在があります。 それは、「権限委譲」「教育」でありま
す。 バルブ事件の時も、いちいち御本社様にお伺いを立てている
時間はありません。 現場が常に全権をもって決断するという風土
が日揮にはあるといえます。

◆それと、この現場には日揮からの延べ100人の駐在員のうち、20名
もの新入社員が派遣されていました。 その新人は、暴動にもひるま
ない先輩社員の姿勢を決して忘れることなく、日揮の現場力のDNAと
して引き継いでいくことでしょう。

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■■ 本日の学び ■■
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◆高いサービス品質を得るためには、現場への権限委譲教育が不
可欠だ。 特に、生産と消費が同時に行われるサービスでは、権限
委譲なくして迅速で柔軟な対応は出来ない。 また、現場に権限委
をするためは、十分な教育を行い、ビジョンを共有し、任せても
安心できる現場を構築しなければならない。

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■■ 編集後記 ■■
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日揮のパプアの現場の事例を見て筆者自身の体験を思い出しまし
た。 商社の駐在員としてアフリカに駐在中、飲料水が欠乏してい
るある村で飲料水用井戸掘りプロジェクトを実行していました。 
メッチャ怖そうな村長さん始め村人全員が水が出るのを今か今かと
待っていましたが、何日掘っても水が出ない。 村人のイライラ感
は最高潮に達していた中、再調査の結果何と元々水源がそこには無
いことがわかり、今さら水でませんと村人に言う勇気もでず、東京
本社に内緒で、機材メーカーの技術者と機材を夜半こっそり撤収し、
トラックで夜逃げを敢行したことを思い出しました。 日揮の現場
力がプラスの現場力なら、筆者の体験はマイナスの現場力ですね。

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