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販売フロアーは宝の山。 顧客の意思を可視化せよ!

ビジネス進化論   ~成功するビジネスモデルの法則~
2009/08/11 第 6号 ━━━


サービスの品質を高めて、顧客満足を向上させるためには、サービ
スを提供する現場で一体何が起こっているのかということを把握し、
そこに問題点や課題を見つけて、適切な対策をとることがとても重
要である。
これからご紹介する内外のいくつかの先進小売業では、
独自の工夫や仕掛けで、現場の見える化に成功し、成果をあげて
いる。


◆2009年8月10日付日経MJの一面に、100円ショップを展開する
セリアの記事が掲載されている。 セリアは、神戸市の商業施設・
ハーバーランドを始めとし、約1000店舗を運営する急成長中の
業界の雄である。

◆売上高では、キャンドゥを抜いて業界2位に躍り出て、過去5年
間の売上高の前年度比伸び率では、業界一位の大創やキャンドゥが
横ばいか下落傾向にあるなかで、セリアは、約10%の伸び率を誇っ
ている。

◆セリアが大きく業績を向上させている理由はいくつかあると記事
はレポートする。 ライバル各社が「脱100円」で品ぞろえの幅を
広げる戦略に対して、セリアは、ただ漠然と商品を置いておくので
はなく、商品の見せ方など売り場作りに工夫したり、売れ筋商品だ
けを置くなど品揃えに工夫をして、顧客のニーズに答えようとして
いるという。

◆セリアの分析に入る前に、ここで最近よく耳にする「見える化」
の重要性について触れたいと思う。 企業経営において、一体何を
「見える化」しなければならないのか?  

◆企業活動の基本として、「PDCAサイクル」という考え方があ
る。  計画(Plan)を立て、実行(Do)し、その結果をチェック
(Check)し、その上で対策(Action)を講じるという一連のサイク
ルのことである。

◆このサイクルを回すためには、チェック(Check)の部分が如何に
適切に出来るかどうかが、その後の対策(Action)を進める上で、
大変重要となってくるのである。 つまり実行(Do)した結果、何
が起こっているのかを発見しなければならない。 

◆製造業、サービス業を問わず、特に、現場で何が問題なのかを発
見(見える化)しなければ、適切な対策を講じることは出来ない。

◆業績を伸ばしている企業は、この部分の見える化のために、ある
工夫をして、今まで見えなかったことを見えるようにすることで、
問題を認識し、次の効果的な対策を講じて、売上向上、顧客満足向
上に寄与させていることが多い。

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■■ 顧客が口に出さない隠れた重要情報を見える化せよ!

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◆さて、セリアの場合はどのような方法で、販売フロアーにて顧客
が言わない隠れた重要情報を取得しているのであろうか? 日経記
事によると、「支持率」という数値を商品ごとにはじき出して活用
することにより、「商品力」を見える化しているのである。

◆「支持率」の算出方法は、各店舗で、POS(販売時点情報管理)デ
ータから得られる単品ごとの販売数を、その日の客数で割って出す。
これで店の規模による販売数量の差を取り除く。 セリアはこの数
字を「支持率」と呼んで、重宝している。

◆この「支持率」は、同様に全店ベースでも算出され、両者の「支
持率」を比較するのである。 元々セリアの商品はすべて100円均一
であるため、価格差による販売力の差はない。 従って、両者を比
較することによって、純粋に商品の「支持率」をベースとした現場
の課題が浮かび上がる。

◆例えば、ある商品で、全店ベースの「支持率」に比べ、個店ベー
スの「支持率」が低いという場合、考えられるのは、その店の商品
の打ち出し方が弱く、販売機会損失を起こしている可能性があると
いう仮説をたてることができる。 

◆つまり、PDCAサイクルの中の対策(Action)を取るための重要
な情報を得ているのである。

◆今までは、店長が経験と勘を頼りに発注していた品揃えにも変化
をもたらすことになる。 ある学生街立地の店舗では、文房具類を
中心に品揃えをしていたが、その店の「支持率」をよく見ると、キ
ッチン類や陶器などの雑貨の「支持率」が全国平均より高かった。

◆そこを重点的に品揃えを行った結果、この店の売上高は前年比2
6%も伸びたという。 まさに、結果をチェック(Check)し、その
上で商品構成を見直すという対策(Action)を講じるという一連の
サイクルをきちんと回して、成功した事例である。

◆あるいは、若い女性向けの「シュシュ」と呼ばれる髪飾りが、全
店ベースの高い支持率であることを、通常ならそういった情報から
隔絶されている高齢の店長が知って、積極的に発注をかけて売り上
げを伸ばしたという報告もある。

◆海外の事例を見てみよう。 ドイツのメトログループ(METRO
Group)は、2005年に売上高が約600億ユーロ(約10兆円)を達成し、
ドイツを中心に31か国に2400店舗を所有、従業員数は27万人を擁す
る、ドイツ一の、また世界でも売上高で第三位の大手流通小売グル
ープである。 

◆このグループには、持株会社であるメトロAGの傘下に、四部門が
あり、ひとつがギャラリア カウホフ(以後カウホフ)という百貨
店部門で、エッセンにある店舗を始めとし主にドイツ国内に141店
舗を所有し運営している。

◆カウホフのエッセンにある百貨店では、RFID(ICタグ)を最大限
活用して、販売フロアーに眠る顧客の情報、特にPOS以前の情報、つ
まり、売れなかった商品の情報を収集している。

◆エッセン駅前にあるカウホフの百貨店の3階メンズフロアー(売
り場面積2000平米)に陳列してある約3万点にのぼるあらゆる商品
(紳士服、紳士用品、小物類など)すべてに世界標準であるEPCグロ
ーバル準拠のUHF帯RFIDタグを貼付し、さらには陳列のために配置さ
れている台や棚、ラック類などの500のすべての什器にも資産管理用
のRFIDタグを貼付して、すべての商品の個品管理をRFIDで行っている。

◆それらの膨大な数の商品に貼付されたRFIDタグは、フロアー一面
に配置しているリーダーによってアンテナ経由常時読み取られてい
るのである。

◆リーダーやアンテナは、棚、試着室、精算用のPOSレジスターの台、
エレベーターやエスカレーターの出入り口、壁、ハンガーをかける
什器や商品陳列台などに取り付けられており、お客様には見えない
ように工夫されて設置されている。

◆この仕掛けによって何が分かるのか?  売れた商品の情報は
POSデータから分かる。 だが、売れなかった商品はPOSを通過しな
いから、データとして上がってこない。 売れなかったということ
はわかるが、フロアーマネージャや商品開発や仕入れ担当者が一番
知りたいのは、なぜ売れなかったのかということである。

◆商品ひとつひとつのICタグをリーダーが読み取ることによって、
どの商品が何時何分何秒にどこからどこへ移動した、あるいは移動
しなかったという履歴情報を個品単位でしかもリアルタイムに得る
ことが出来るのである。

◆一言で売れなかった商品といっても、ヒストリーがある。 その
ヒストリーが全て分かる。 ある商品は一回も手に取られることが
なかったとすると、製品のデザインそのものが劣っているのか、陳
列方法や棚割りに問題があった可能性がある。

◆ある商品は、何回も手に取られて、試着室で数多く試着されてい
るのに買われていないということがわかると、着心地があるいのか、
サイズのラインアップに問題があるのではないかという仮説がたつ。

◆またある商品は、売れ筋にもかかわらず売れなかったとしよう。
その場合、商品自体は配送センターからバックヤードに入庫してい
るが、バックヤードから素早く販売フロアーに移動されていなかっ
たという履歴がわかると、以下に迅速に販売フロアーに陳列するこ
とができるかが課題として認識される。

◆また、どの陳列棚が一番多くお客様が商品にさわるかなどのデー
タも得ることができ、陳列棚を置く位置も検討することもできる。

◆日本でも同様の取り組みが、アパレル産業協会の取り組みとして、
平成20年度 経済産業省支援事業「IT投資効率性向上のための共
通基盤開発ププロジェクト」にて実行された。 実施店舗は若者に
人気のFLANDREであった。

◆このように先進的な小売企業は、もの言わぬお客様の声を、新た
な仕掛けを駆使して、見える化することによって、より詳細なデー
タを基に販売戦略を練ることで競争優位性を保ち続けているのであ
る。

参考文献:
「顧客はサービスを買っている」諏訪良武氏著(ダイヤモンド社刊)

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■■ 本日の学び ■■
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サービスは、見えない。 サービスには、カタチがない。  だが、
工夫すれば見ることが出来るのである。 現場で何が起こっている
のか、人間が見ているだけでは、あるいは手作業で集めた情報から
だけでは、今までなかなか本質を掴むことが出来なかった。 今日
では、RFIDやITなどのコンピューター技術を駆使することによって、
現場担当者の経験や勘だけでなく、科学的に顧客動向を分析できて、
迅速かつ的確な対策を講じて、サービス品質を向上させることが出
来る時代が到来しつつある。  われわれ消費者も大いにそのメリ
ットを享受したいものである。


情報ソース:独自取材及び日経MJ 2009.08.10━━

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