ドイツメトロ (METRO group)壮大なRFIDプロジェクトレポート
◆ここからは、三宅商店主日記 「2008年2月15日(金)
冬のドイツ一人旅」の続編である。
◆いよいよドイツメトログループの中核ブランドである
Kaufhof Galeria百貨店でのRFID活用レポートの始まり。
始まり。
◆世界でも最先端のRFIDの取り組みを行っている百貨店は、
Dusseldorfから高速鉄道で約40分のところにあるEssenと
いう小都市の駅前にあった。
◆この百貨店の個別レポートをする前に、METROグループ
の全体像を紹介しよう。
◆ドイツメトログループ(METRO Group)は、2006年の
売上高が600億ユーロ(約10兆円)を達成した、ドイツ一の、
かつ、世界でも第三位の有数の大手流通小売グループである。
31か国に2400店舗を持ち、従業員数は27万人を擁する。
◆このグループは持ち株会社であるメトロAGの傘下に、
以下の四部門がある。
(1)Cash&Carry(現金卸売業)
(2)Real(食品小売ハイパーマーケット)
(3)Media Markt (マルチメディア小売店舗)とSturn(家電量販店)、
(4)Galeria Kaufhof (百貨店)
◆メトログループがRFID(ICタグ)を導入した最初の取組は、
未来型店舗フューチャーストアとして2003年4月に新装
オープンした、Extra(スーパーチェーン)のラインベルグ店
(デュッセルドルフ郊外)利用して、フューチャーストア
イニシアティブというプロジェクトとしての取り組みが最初
である。
◆この取り組みは、メトログループのみならず、SAP,インテル、
IBMを中核として、コカ・コーラ、P&G、などの一般消費財
メーカー、ヒューレット・パッカードなどののIT企業、多数の
RFIDベンダーなど約40社のパートナーの協力によって
進められた。
◆フューチャーストア イニシアティブの目的は、以下の
とおりであった。
(1)革新的技術の導入による小売ビジネスの効率化
(2)未来の小売ビジョンの展開
(3)それにより消費者・小売業者・サプライヤーにメリットを
還元することで、グループとして小売業界における革新者
としての位置づけを高め、業界の国際的技術標準確立の
リーダーシップをとること
◆メトログループとして、RFIDは、まさに革新的技術の
ひとつと捉えられており、2004年11月からRFIDの実証
実験が開始された。
◆この実験は当初一部の商品に限り、一部の店頭と倉庫
における実験であったが、最終的には、メーカーから店舗の
販売フローの棚、さらにはPOS(精算のためのレジ)レジに
至るまでの、モノ(商品や貨物)の動きを正確にトラッキング
することを狙っていた。
◆それによって、無駄のない、最適な発注を実現し、店頭
での欠品を防ぎ、また盗難を防止し、顧客につねに商品を
効率よく提供するという小売りの究極の課題に挑戦するもの
であったのだ。
三宅商店主 日記 2008年2月15日(金) 冬のドイツ一人旅
ドイツのEssenというところに来ている。
Dusseldorfから高速鉄道で北へ40分のところに
ある中堅工業都市だ。
街中をぶらりと歩いてみると、いかにも冬のヨーロッパ
といった様なたたずまいが見られ、旅情を誘う。
成田からフランクフルト経由降り立ったDusseldorfでは大勢の
日本人に遭遇したが、ここEssenではさすがに日本人の姿は
見かけない。
町のメインストリートからちょっと入った何気ない小道に風情が
あっていい。
由緒正しそうな立派な建物が何気なくあったりする。
それを仲良く眺める老夫婦も絵になる。
ハプススブルグ家で栄えたドイツには、何となく余裕が感じられる。
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いい感じの初老のお二人と由緒正しそうな立派な建物。ドイツっぽい。
ただ、寒さが半端じゃない。
まるで、冬の札幌なみの寒さである。
緯度も同じぐらいなので仕方がない。
雪こそ降らないが、広場には屋外スケートリンクがあり、大勢の
市民がスケートを楽しんでいる程だ。
手袋なしではいられない。
空気そのものが底冷えしており、冷蔵庫の中にいるような感じである。
表通りを歩いているとふと古色蒼然としたたたずまいの教会が
現れたので、暖をとるために恐る恐る中に入ってみた。
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表通りに面して堂々とたたずんでいる古めかしい協会。 街の雰囲気にしっかり溶け込んでいる
教会の中に入ってみると、ミサの最中であった。
時折パイプオルガンの低い音色が天井から荘厳に響いてくる。
司祭の説教をする声が静かに響き渡り、人々の声がそれに続く。
シャッター音に気を使いながら写真を1枚。
心の底から暖かくなる。
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並木の向こうにかすんで見える大きな教会の屋根。何やら偉大なお爺さんのような存在感
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一番手前左のお姉さん。 他人事とはいえ、寒くないのだろうか・・・・?
Essenの駅前広場に出ると、何やら大勢の若者が、地元の
サッカーチームの黄色い大きな旗を振り回しながら、
大声でシュプレヒコールのようなものを叫んでいる。
初めて目の前でフーリガンというものを見た。
でも、特別に暴れているわけではなさそう。
日本の成人式でのバカ騒ぎのほうがもっとすごい。
ただ、よく周りをみると、多数のごっつい体格の警官
や多くのパトカーががっちり取り囲んでいるのを
見るとちょっと怖くなってきた。
隣でビール片手に(この寒いのによく外で飲むな~)見物している
赤っぱなのおじさんに聞くと、地元のサポーターの連中だそうで、
暴れだすと半端じゃないとのこと。
ただ、まだ暴れていないからフーリガンではないと。
フーリガン化する可能性のあるサポーターの集会というわけだ。
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Essenの駅前広場。 遠くの黄色い旗をもった黒い集団がフーリガン予備軍。
よく見ると右手前に警察官(背中にPOLOZEIと書いてある)。左にパトカー。
ところでなぜこんなところにいるかというと、6月に出版する
予定の本の取材のために訪れている。
実はここEssenにあるドイツで最大小売りグループMETRO
グループの百貨店が、世界で最先端のRFIDを活用した百貨店運営
を行っているのだ。
ドイツMETROグループ
一見すると何気ない、どこにでもある百貨店である。
いったいこの百貨店で何が起こっているのかをつぶさに取材して
きたので、次回のRFIDのコラムで紹介したいと思う。
日本一のお客様思いのスーパー
◆ここ連日中国からの農薬混じりの餃子問題でゆれにゆれています。
加ト吉やJTの信用問題までに発展しています。
◆昨年から繰り返される食品への偽造、偽装、安全問題。
不二家、ミートホープ、白い恋人、赤福、船場吉兆、マクドナルド
などなど・・・。
あまりにも多すぎて、一つひとつがどうだったのか、思い出せないくらいです。
◆毎年恒例の京都清水寺の僧侶が書く「今年の漢字」の昨年版は、
情けないことに「偽」でした。
偽装、偽証、偽計の「ギ」だそうです。
◆こういう状況を見ていますと、企業経営は、「顧客志向」、「現場主義」である。
などと昔からよく言われますが、そんなものいったいどこに行ってしまったのかと
思ってしまいます。
◆今年のお正月に、近くのビデオレンタルショップに行って、故伊丹十三監督の
「スーパーの女」という映画のDVDを借りてきて観てみました。
◆私が師事している松林先生というコンサルタントの方から、「顧客志向とは何か
という本質を教える素晴らしい映画だからぜひ観るといい」と薦められたから
でした。
◆松林先生は、製造業の業務改革などに特化したワクコンサルティング(株)
という会社の社長をされており、日々顧客志向とは、現場主義とはなんぞや
といったことを追及されておられます。 ワクコンサルティングのWEBサイト
◆この映画を観て、びっくりしました。
1996年の作品なのでもう10年以上も前に作られたのですが、そこに描かれ
ているストーリーは、まさに昨今問題になっている食品偽装に真正面から
取り組んで、真の顧客志向を追及するスーパーの物語が描かれておりました。
◆スーパーの名前は「正直屋」。
宮本信子演じる主人公が、あるとき近隣にオープンした安売り日本一
を歌い文句にする「安売り大魔王」に客を取られてしまい、そこに対抗
するために、幼馴染の社長を支えながら、お店の改革に着手し、
やがて遠のいていたお客を見事取り戻すというストーリーです。
◆主人公が支援を開始したときの正直屋は、名前とは全く正反対の
オペレーションを行っていました。
◆たとえば、業界の常識だといって、前日の売れ残りの肉や魚をパック
し直したり(リパック)、日付を偽装したり、高級肉に安い肉を交ぜて
かさを増してごまかしたりと、消費者がまさかと思うようなことを
平気で行って、儲けることばかりを優先していました。
◆儲け至上主義が偽装を生み、結局儲けるどころか、大事なお客様
を競合に奪われてしまいました。
◆お客様もさることながら、そこで働く社員やパートのおばちゃんも
正直屋で買うことがないスーパーにまで落ちぶれてしまいました。
◆そこで、主人公は、何よりも大切なことは何かを考えに考え抜いた末に、
それは、「お客様に本当に喜んでいただくこと」であるというビジョンを
掲げるにいたりました。
◆そして、日本一のお客様思いのスーパーに何があっても生まれ変わろう
と決意したのです。
◆それからは、偽装に手を染めていた職人やマネージャー、調達先
からの猛反発に遭いながらも、偽装を良しとしない一部の社員や
パートのおばちゃんたちと一緒になってお客の声を真摯に聞き留め、
希望や要望を吸い上げ、たとえ誰が抵抗しようと、多少お店に
損が出ることになろうと、やらなければならないことに邁進するのでした。
◆この正直屋のビジネスモデルから学べるのは、
1.顧客志向・現場主義
2.情熱をもったリーダーの存在(主人公)と明確な
ビジョン(こうあるべきという方向性)
3.既存の業務プロセスの見直しと改革(改善ではない)
4.社員のやる気の喚起
の4点です。
◆松林先生も「顧客満足(CS)の解説本を何冊も読むよりは、顧客志向の
入門編としては「スーパーの女」を見るのが一番ストレートでわかりやすい」
とおっしゃっております。
◆以前ご覧になった方も、エンタテイメント映画としてご覧になった時と
違い、このような観点から皆さんもぜひ一度ご覧になってみてはいかがで
しょうか?
◆ただ、本当に今すぐ見てほしい方々は、冒頭に記載した企業の経営者
ですね。 ぜひ正直屋のように再生してもらいたいと思います。
大江戸ビジネスモデル考 (その1)
◆1603年~1867年にかけて栄えた江戸時代は、これからの政治を考える際
に明治時代がよく引き合いにされるのと同じように、これからのビジネスモデル
を考えるにおいては大変参考になる時代であり、優秀なビジネスモデルの
宝庫であるといえるのではないかと思います。
◆現在の世の中で当たり前となっているビジネスモデルの多くが、その起源を
たどると江戸時代であることが多いのです。
◆徳川家康が関ヶ原の戦いに勝利をおさめた後、江戸開府の1603年を始期とし、
徳川幕府は徹底的な政局安定策をとり、諸大名や朝廷に対し徹底した法治体制を
敷くなどしました。
◆その結果、260年以上続く長期安定政権を確立し、「天下泰平」という
今でも使われることばが生まれるほどの平和状態を日本にもたらしました。
◆こうした国内の長期安定的な生活基盤に加えて、対外的には鎖国をして
いたため、長崎出島を通じての一部の貿易以外は、豊富な国内市場のニーズ
に対応するニュービジネスが多く育ったのです。
◆ひるがえって現在の日本がおかれている状況をみると、グローバル
スタンダードな経済環境の中での企業活動を強いられており、どうしても目を
海外に向けて活動せざるを得ないし、海外からのビジネススタイルやビジネス
モデルの影響を受けざるをえなくなって来ています。
◆ただ、忘れてはならないのは、この小さな島国には、広く教育を受けた
1億2千万人もの人間が相対的に平和に生活しており、ライフスタイルの多様化
に伴って、いろいろなサービスや製品、ソリューションを日々渇望している巨大
マーケットが存在しているということであります。
◆今のこの平成の時代というのは、経済規模や人口規模などの差はあるとは
言え、江戸時代と何か多くの共通点があるように思えるのであります。
◆従って江戸時代に生み出された数々のビジネスモデルを分析することによって、
日本人の持っている商機のルーツに触れることができるのではと思いました。
◆大江戸ビジネスモデルを探究することによって、これからの日本の市場
が求めているビジネスモデルの方向性を教えてくれるのではないかと考えた
のが、この大江戸ビジネスモデル考の主旨であります。
◆次回から何回かにわたって大江戸ビジネスモデルの事例をいくつかご紹介
していきたいと思います。
新車を売らない自動車販売店?
◆どの企業も、自分たちのコアビジネスとして売りたいものというものがあって、
それを何とか売ろうとして日々躍起になっています。
だが、その売りたいものの品質や価格などに特に問題がないのに売れ行きが
伸びない時や、売ろうとすればするほど売れないといった時を迎えたときに、
どうするか?
◆その時に大事なのが、逆転の発想です。
たとえば車を売りたいのであれば、車を売り込むなということです。
◆日経朝刊に興味深い記事が載っていました。
新車を一台も売らないで利益を出す自動車販売店があるそうです。
普通は、売りやすい新車の販売に力を入れるのが常識ですが、
トヨタ自動車系の販売店はちがいます。
◆ネッツトヨタ神戸は、国内市場縮小のなか、新車販売に苦戦していました。
そこで、補修・点検サービスや中古車などの新車販売以外のサービスの充実
に軸をおいて、そこに利益の源泉を求めました。
◆その結果、新車販売以外の利益を固定費で割った「固定費カバー率」は、
全国平均が78%に対して、120%に迫るようになり、新車販売以外の
サービスだけで十分固定費をカバーすることになりました。
補修・点検サービスの充実が、結果として、新車購入の顧客の開拓も
可能となり、トヨタの中で優良販社として表彰を受けるにいたったのです。
◆車の展示台数を極力減らして、余ったスペースを別なサービスに生かす
という逆転の発想をとった販売店もあります。
◆ネッツテラス尼崎では、展示車をたった一台だけとし、余ったスペースには、
車検やオイル交換などを待つ顧客に対する喫茶スペースを設け、待ち時間が
長いサービスを取り込む策をとりました。
さらにすごいのはトヨタ車以外の補修・点検も取り込み、結果として地域
シェアを大きく伸ばしました。
◆これらの例は新車販売からいったん視点をはずして、それ以外に顧客が
求めているサービスに目を向けて顧客をつなぎ留め、最後に新車の販売増
を目指すという逆転の発想戦略であります。
◆価格戦略でも、視点を変えて成功した例もあります。
通常価格戦略は新車販売価格が焦点になります。
◆金融子会社のトヨタファイナンスは、逆に下取り価格をいかに高くするかに
注目しました。
200万件の中古車オークションの取引データを分析し、下取り価格を
平均1割引き上げることに成功。
新車価格と下取り価格の差額を圧縮したローンが好評となり、そのローンの
利用率は3倍になりました。
◆また、IT活用の分野では、カーナビゲーション機能に逆の発想を用いました。
通常のカーナビは、顧客向けに一方的に渋滞情報などを一方的に発信しますが、
レクサスに搭載されているカーナビは、顧客からオペレーターに対して発信
できる機能をもちます。
これにより、対面販売では不可能は24時間体制での顧客の声を収集して、
新しいサービスや新車開発などのマーケティング戦略に生かしています。
◆車の品質は一級品のあのトヨタでさえ、いろいろ知恵を絞り、発想を逆転
させることで、活路を見出そうとしているのです。
◆顧客は新車だけを買うわけではない。車を含めた周辺のサービスも含めて
買うのです。
売れない売れないと嘆いたり、うちの製品やサービスのラインナップにはない
からとか決めつけずに、この事例を参考にして、「逆転の発想」を行い、実行
してみては如何?
参考記事 日経071221 15面
