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政府関係者は、今すぐマーケティングを学びなさい!

東日本巨大地震が発生して以降、懸命の復旧作業が続いておりますが、
いまだに復興への大きな道筋や、シナリオ、さらにはこれからの日本
のあるべき姿などの青写真が見えてきません。

政府関係者は、今こそ「マーケティング」を学んで、「顧客」である
国民に「ホールプロダクト」を示してください。

未だに日本政府からは、政府が考えているソリューションの全体像が
見えてきません。 今後日本はどのようなステップで、どんな青写真
の元に、何を実行して行こうとしているのかといった発信がなされず
にいます。 

その代わりに、被災地や福島第一原発の現場で行われている救援活動
状況ばかりが断片的に伝わってくるのみです。

今こそ政府は、国民あるいは世界に向かって、日本はこうなってい
く!という明確で強いメッセージを発する時期だと思います。

マーケティングには、サービスや製品を提供する「提供者」と、その
サービスや製品の提供を受けて、ベネフィットを享受する「顧客」
いう概念が存在します。

今、サービスや製品を提供する「提供者」を「政府」、そして、ベネ
フィットを享受する「顧客」を「国民」と置き換えて考えてみたいと
思います。

マーケティングの考え方の一つに、「ホールプロダクト」という考え
方があります。 顧客が期待するサービス・製品は、ひとつの価値だ
けで成り立っているのではありません。 いくつもの価値が複合して
機能して初めて顧客は満足するのです。 それを
「ホールプロダクト」
と呼んでいます。

「ホールプロダクト」は中心から外側に向かって「コアプロダクト」、
「期待プロダクト」、「拡張プロダクト」、「理想プロダクト」
の順
に4つの層をなして形成されています。

「コアプロダクト」というのは、顧客が抱えている課題・問題などを
解決するための中核となるベネフィットで構成されています。 顧客
が製品やサービスを購買する場合に必ず求めるものです。 例えばパ
ソコンの場合は、仕様通りのパソコンそのものです。

「期待プロダクト」というのは、顧客が購入する際、こうであるべき
だと考える製品・サービスのことで、顧客満足のためには最低限そろ
っている必要があるものです。パソコンの場合だと、液晶モニターは
当然ついているはずだと考えます。

「拡張プロダクト」というのは、コアプロダクトの機能を拡張する
ために準備された数多くの付属品やサービスのことです。 顧客の
購入目的を最大限満足させるために必要なもので、パソコンの場合
だと、プリンターや、24時間対応のカスタマーサービス受付、使い
方の勉強会などです。

「理想プロダクト」というのは、顧客に提供される価値の上限をさ
し、顧客がこれ以上の製品・サービスは求めることはないものです。

上記でわかるとおり、顧客がパソコンを買う目的は、パソコンとい
う物理的な箱を所有することが目的ではなく、快適に効率よく情報
を収集・加工し、仕事の能率を格段に向上させるための機能を買う、
つまりホールプロダクトとして買うのです。

例えば、ゴルフ場でプレーするのも、ボールを打つのが目的ではな
く、友達と楽しく自然の中でプレーを楽しみ、もっと親交を深めた
いということが目的であったりします。

ここで、今、日本国民は政府に対してどんなホールプロダクトを欲
しているのでしょうか?

筆者の勝手な考えで以下のようなホールプロダクトをデザインしま
した。

「コアプロダクト」は、マズローの欲求五段階説で言われる「欠乏
欲求」である安全の欲求からきています。 行方不明者の救助と放
射能汚染の拡大を食い止めて原発を安定した状態にし、津波や地震
の二次被害から解放され、ライフラインが復旧し当面の衣食住が満
たされた安全な環境の提供などであろうかと思います。

「期待プロダクト」
は、その上で、日本全体の電力需給不足や物資
の偏在を解消すべく十分な発電供給能力や流通・物流網の回復がな
され、製造業も生産再開を開始する状態、いわば安心できる環境の
整備・提供でありましょう。

「拡張プロダクト」は、その上で、日本の産業・経済・金融状況や
国民生活が震災前の状況に復帰し、海外から観光客や資本、ビジネス
マンなど多く戻ってきて、活況を呈することではないかと思います。

「理想プロダクト」は、この震災から日本全体が世界と一緒になって
一致団結して見事復興し、その経験やノウハウ・知見を生かして、震
災や津波災害、次世代エネルギー政策などの分野を中心に世界の平和
と安定に貢献し、尊敬と信頼を得る国になることです。

さて、マーケティングでは、このホールプロダクトをデザインし、発
信すればそれで終わりではなく、時間と共に市場が推移していくにつ
れて、それぞれ四つのプロダクトを市場に出していくタイミングを検
討しなければなりません。

タイミングを間違えると、ホールプロダクトは市場から受け入れられ
ません。

まず、最初の「コアプロダクト」は、初期市場に提供され、その対象は、
通常極めてセグメンテーションされた狭い市場セグメントのピンポイ
ントの顧客に対して集中的に提供します。 今回の地震の場合、被災
地への集中提供となります。

その後、市場が時間と共に推移し、メインストリーム市場と呼ばれる
マス市場に移行するにつれて、提供する顧客の対象領域を広げて、
ホールプロダクトの層を外側に拡大していきながら提供します。

今回の場合「期待プロダクト」は、首都東京を含む東日本地域の市民
と企業群となり、「拡張プロダクト」は、日本国民全員であり、最後
「理想プロダクト」は、日本の復興と世界の安定を願っている全世
界の国々の政府や組織、人々となります。

もちろん、個別の具体的なソリューションは、さらに顧客の属性によ
って(年齢や企業規模など)で、セグメンテーションされなければな
りません。

ここで一つ重要な点は、初期市場とメインストリーム市場の間には、
キャズムと呼ばれる大きな溝が存在しており、初期市場で成果をあげ
ることができなかったホールプロダクトは、キャズムという奈落の底
に転落してしまい、そのホールプロダクトはメインストリーム市場に
移行できずに、そこで終わりとなってしまうという点です。

従って、今回も「コアプロダクト」を如何に的確に震災現場に提供し
成果をあげられるかどうかが、今後のホールプロダクトの戦略に大き
く影響を及ぼすことを理解する必要があります。

ホールプロダクトという呼び名でなくても結構ですから、日本政府に
は、今後日本が歩んでいく道筋とその先にある姿を、国民や世界に
一刻も早く提示頂きたいと思います。


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人類が頼るべき原子力の代替エネルギーは何か?

原子力の次を担うエネルギーは何か?という命題を、東日本大震災は我々に突き
つけています。
今回は、いろいろな代替エネルギーについて考えてみました。


CNNでは、今回の原発事故を受けて、次の代替エネルギーは何だ?
という問いかけを始めています。
「Japan and energy: What's the alternative?」

CO2削減効果の高いエネルギーの切り札として、世界から多くの期待を寄
せられ、世界各国で建設計画が実行されていた原発。 今回の福島第一
原発の事故で、そのムードは吹っ飛んでしまいました。

では、次の代替エネルギーは一体何なのか? この問いかけに対する回
答は、一部の研究者や政府関係者だけに任せているだけではなく、我々
自身もシロートながら主体的に考えてみる必要があるのではと思ってい
ます。

現在、日本のエネルギー別発電電力量は、2009年の統計で、LNG 29.4%、
原子力 29.2%、石炭 24.7%、水力 8.0%、石油 7.6%、新エネルギー
1.1%となっています(日経2011年3月25日朝刊)。

CNNのレポートでは、新エネルギーのひとつである「風力発電」にフォ
ーカスを当てています。  福島第一原発の近くで稼働していた風力発
電プラントは、一基のタービンを残して、その他全て順調に稼働してい
ると報告しています。

ただ、風力発電の問題は、まだその発電規模がとても小さいという点で
す。 確かにクリーンで、安全で、地震にも強いということが実証され
たとしても、前述のプラントの場合、福島第一原発の6号機までの合計
能力の10分の一程度でしかありません。

同じ新エネルギーを見ていきますと、「太陽熱発電」も盛んになって来
ています。 2011年2月25日付日経に、三菱商事が、スペインで世界最大
級の太陽光発電を現地企業と共同運営するという記事が出ていました。

発電能力は20万キロワットで、一般家庭10万世帯分の電力需要を賄える
とのことです。 現在世界の太陽熱発電能力は100万キロワットであるが、
2020年にはその150倍に増える見通しです。 ただ、発電効率は高いので
すが、難点は広大な土地が必要になる点です。

石油や石炭に続くエネルギーとして期待の高いのは、「メタンハイドレ
ード」
といわれる、メタンを豊富に含んだ物質です。 東海大学の山田
義彦教授の報告によりますと、この物質が日本の海に大量に眠っている
ということです。

メタンは、燃焼時に発生する二酸化炭素量が、石油や石炭などに比べる
と約半分と大変環境にも優しいが、いかんせん推進500mから1000m程度の
海底のさらに地下数百メートルの地層から採取する必要があり、高い技
術と資金が必要となってくるのです。

日本の周囲に豊富に存在する海洋エネルギーも重要な次の発電手段です。
 そのひとつが「洋上風力発電」です。 地上の風力発電に比べて立地
確保や景観の問題、プロペラによる羽切音の騒音問題などがないという
メリットがありますが、陸上に比べて設備コストがかかってしまうとい
う難点はあります。

世界四位の海水量を誇る海洋大国の日本が注目しているのは、「波力発
電」
です。 波の力を発電に変えてしまおうというのがこれです。 波
による海面の上下運動で空気を圧縮し、その力でタービンを回転させて
発電します。

今回多大な被害をもたらした大津波も、逆転の発想で発電の対象の源泉
として活用できるのかもしれません。 日本の海岸線に押し寄せる全て
の波の力を波力発電に使用すると、一時間で約3500万キロワットの発電
が可能となるという試算もあり、これは、この夏に予測されている首都
圏の電力不足1500万キロワットの約2倍以上を楽に賄える計算です。

あと、「海底温度差発電」というのもあります。 表層の温かい海水(25
~30度)と、深層の冷えた海水(4~5度)の温度差を利用して発電す
るのですが、風力や太陽光などの自然エネルギーと違って、天候に左右
されずに安定した供給が期待できます。

いずれの方法も、送電方法や経済合理性など解決すべき課題・問題点が
山積しておりますが、日本を始め世界各国の研究機関が実用化に向けて
確実に歩みだしております。

逆に世の中の流れと逆行するかのようですが、「石炭火力発電」も見直
されています。 最新鋭の火力発電所では、石炭を燃やした際のNox
(窒素酸化物)やSOx(硫黄酸化物)などを削減する技術が大幅に進み、
クリーンエネルギーになってきたということです。

Jパワーの横浜発電所では、大震災の後フル稼働の様ですが、ここも発
電効率が、20%台以下が一般的な太陽光や風力よりも40%以上も高く、
昔の石炭火力のイメージではないようです。

あとは、プロパンガス(LPガス)から電気を作り燃料電池ユニットに
蓄電し、かつ太陽光発電と組み合わせたダブル発電という家庭用向けの
自家発電システムも実用化されてきました。

これからの世の中は、益々節電が求められるでしょうし、さらに究極的
には、各家庭はエネルギーの自給自足へと回帰していくようにも思えま
す。

読者の皆様も、これを機会に発電という課題を身近なものとして捉え直
して、最適なエネルギーとは何かを考え直してみては如何でしょうか?

参考文献:「日本は世界第4位の海洋大国(山田吉彦著)講談社」

ドイツメトロ (METRO group)壮大なRFIDプロジェクトレポート

◆ここからは、三宅商店主日記 「2008年2月15日(金)
冬のドイツ一人旅」の続編である。


◆いよいよドイツメトログループの中核ブランドである
Kaufhof Galeria百貨店でのRFID活用レポートの始まり。
始まり。


◆世界でも最先端のRFIDの取り組みを行っている百貨店は、
Dusseldorfから高速鉄道で約40分のところにあるEssenと
いう小都市の駅前にあった。


DSC05438.JPG

◆この百貨店の個別レポートをする前に、METROグループ
の全体像を紹介しよう。


BD-Group-Bruecke1-002.jpgのサムネール画像
写真提供:メトログループ


◆ドイツメトログループ(METRO Group)は、2006年の
売上高が600億ユーロ(約10兆円)を達成した、ドイツ一の、
かつ、世界でも第三位の有数の大手流通小売グループである。
31か国に2400店舗を持ち、従業員数は27万人を擁する。


◆このグループは持ち株会社であるメトロAGの傘下に、
以下の四部門がある。

(1)Cash&Carry(現金卸売業)
(2)Real(食品小売ハイパーマーケット)
(3)Media Markt (マルチメディア小売店舗)とSturn(家電量販店)、
(4)Galeria Kaufhof (百貨店)


グループ写真及び世界展開地図.JPG
写真提供:メトログループ


◆メトログループがRFID(ICタグ)を導入した最初の取組は、
未来型店舗フューチャーストアとして2003年4月に新装
オープンした、Extra(スーパーチェーン)のラインベルグ店
(デュッセルドルフ郊外)利用して、フューチャーストア
イニシアティブというプロジェクトとしての取り組みが最初
である。


◆この取り組みは、メトログループのみならず、SAP,インテル、
IBMを中核として、コカ・コーラ、P&G、などの一般消費財
メーカー、ヒューレット・パッカードなどののIT企業、多数の
RFIDベンダーなど約40社のパートナーの協力によって
進められた。


◆フューチャーストア イニシアティブの目的は、以下の
とおりであった。

(1)革新的技術の導入による小売ビジネスの効率化
(2)未来の小売ビジョンの展開
(3)それにより消費者・小売業者・サプライヤーにメリットを
還元することで、グループとして小売業界における革新者
としての位置づけを高め、業界の国際的技術標準確立の
リーダーシップをとること


◆メトログループとして、RFIDは、まさに革新的技術の
ひとつと捉えられており、2004年11月からRFIDの実証
実験が開始された。


◆この実験は当初一部の商品に限り、一部の店頭と倉庫
における実験であったが、最終的には、メーカーから店舗の
販売フローの棚、さらにはPOS(精算のためのレジ)レジに
至るまでの、モノ(商品や貨物)の動きを正確にトラッキング
することを狙っていた。


◆それによって、無駄のない、最適な発注を実現し、店頭
での欠品を防ぎ、また盗難を防止し、顧客につねに商品を
効率よく提供するという小売りの究極の課題に挑戦するもの
であったのだ。

三宅商店主 日記  2008年2月15日(金) 冬のドイツ一人旅

ドイツのEssenというところに来ている。

Dusseldorfから高速鉄道で北へ40分のところに
ある中堅工業都市だ。

街中をぶらりと歩いてみると、いかにも冬のヨーロッパ
といった様なたたずまいが見られ、旅情を誘う。


DSC05368.JPG


成田からフランクフルト経由降り立ったDusseldorfでは大勢の
日本人に遭遇したが、ここEssenではさすがに日本人の姿は
見かけない。
町のメインストリートからちょっと入った何気ない小道に風情が
あっていい。


DSC05371.JPG
何気なく曲がっていく小道。 日本ではありそでなさそう。


由緒正しそうな立派な建物が何気なくあったりする。
それを仲良く眺める老夫婦も絵になる。
ハプススブルグ家で栄えたドイツには、何となく余裕が感じられる。


DSC05365.JPG
いい感じの初老のお二人と由緒正しそうな立派な建物。ドイツっぽい。


ただ、寒さが半端じゃない。 
まるで、冬の札幌なみの寒さである。
緯度も同じぐらいなので仕方がない。

雪こそ降らないが、広場には屋外スケートリンクがあり、大勢の
市民がスケートを楽しんでいる程だ。


DSC05359.JPG


手袋なしではいられない。
空気そのものが底冷えしており、冷蔵庫の中にいるような感じである。

表通りを歩いているとふと古色蒼然としたたたずまいの教会が
現れたので、暖をとるために恐る恐る中に入ってみた。


DSC05376.JPG
表通りに面して堂々とたたずんでいる古めかしい協会。 街の雰囲気にしっかり溶け込んでいる


教会の中に入ってみると、ミサの最中であった。
時折パイプオルガンの低い音色が天井から荘厳に響いてくる。
司祭の説教をする声が静かに響き渡り、人々の声がそれに続く。
 
シャッター音に気を使いながら写真を1枚。
心の底から暖かくなる。


DSC05374-1.JPG


DSC05378.JPG]
並木の向こうにかすんで見える大きな教会の屋根。何やら偉大なお爺さんのような存在感


DSC05379.JPG
一番手前左のお姉さん。 他人事とはいえ、寒くないのだろうか・・・・?


Essenの駅前広場に出ると、何やら大勢の若者が、地元の
サッカーチームの黄色い大きな旗を振り回しながら、
大声でシュプレヒコールのようなものを叫んでいる。

初めて目の前でフーリガンというものを見た。 

でも、特別に暴れているわけではなさそう。
日本の成人式でのバカ騒ぎのほうがもっとすごい。

ただ、よく周りをみると、多数のごっつい体格の警官
や多くのパトカーががっちり取り囲んでいるのを
見るとちょっと怖くなってきた。

隣でビール片手に(この寒いのによく外で飲むな~)見物している
赤っぱなのおじさんに聞くと、地元のサポーターの連中だそうで、
暴れだすと半端じゃないとのこと。

ただ、まだ暴れていないからフーリガンではないと。
フーリガン化する可能性のあるサポーターの集会というわけだ。


DSC05382.JPG
Essenの駅前広場。 遠くの黄色い旗をもった黒い集団がフーリガン予備軍。
よく見ると右手前に警察官(背中にPOLOZEIと書いてある)。左にパトカー。


ところでなぜこんなところにいるかというと、6月に出版する
予定の本の取材のために訪れている。

実はここEssenにあるドイツで最大小売りグループMETRO
グループの百貨店が、世界で最先端のRFIDを活用した百貨店運営
を行っているのだ。
ドイツMETROグループ


DSC05380.JPG

一見すると何気ない、どこにでもある百貨店である。
いったいこの百貨店で何が起こっているのかをつぶさに取材して
きたので、次回のRFIDのコラムで紹介したいと思う。


DSC05381.JPG


日本一のお客様思いのスーパー

◆ここ連日中国からの農薬混じりの餃子問題でゆれにゆれています。
加ト吉やJTの信用問題までに発展しています。

◆昨年から繰り返される食品への偽造、偽装、安全問題。
不二家、ミートホープ、白い恋人、赤福、船場吉兆、マクドナルド
などなど・・・。
あまりにも多すぎて、一つひとつがどうだったのか、思い出せないくらいです。

◆毎年恒例の京都清水寺の僧侶が書く「今年の漢字」の昨年版は、
情けないことに「偽」でした。
偽装、偽証、偽計の「ギ」だそうです。

◆こういう状況を見ていますと、企業経営は、「顧客志向」、「現場主義」である。
などと昔からよく言われますが、そんなものいったいどこに行ってしまったのかと
思ってしまいます。

◆今年のお正月に、近くのビデオレンタルショップに行って、故伊丹十三監督の
「スーパーの女」という映画のDVDを借りてきて観てみました。

◆私が師事している松林先生というコンサルタントの方から、「顧客志向とは何か
という本質を教える素晴らしい映画だからぜひ観るといい」と薦められたから
でした。

◆松林先生は、製造業の業務改革などに特化したワクコンサルティング(株)
という会社の社長をされており、日々顧客志向とは、現場主義とはなんぞや
といったことを追及されておられます。   ワクコンサルティングのWEBサイト

◆この映画を観て、びっくりしました。
1996年の作品なのでもう10年以上も前に作られたのですが、そこに描かれ
ているストーリーは、まさに昨今問題になっている食品偽装に真正面から
取り組んで、真の顧客志向を追及するスーパーの物語が描かれておりました。

◆スーパーの名前は「正直屋」。
宮本信子演じる主人公が、あるとき近隣にオープンした安売り日本一
を歌い文句にする「安売り大魔王」に客を取られてしまい、そこに対抗
するために、幼馴染の社長を支えながら、お店の改革に着手し、
やがて遠のいていたお客を見事取り戻すというストーリーです。

◆主人公が支援を開始したときの正直屋は、名前とは全く正反対の
オペレーションを行っていました。

◆たとえば、業界の常識だといって、前日の売れ残りの肉や魚をパック
し直したり(リパック)、日付を偽装したり、高級肉に安い肉を交ぜて
かさを増してごまかしたりと、消費者がまさかと思うようなことを
平気で行って、儲けることばかりを優先していました。

◆儲け至上主義が偽装を生み、結局儲けるどころか、大事なお客様
を競合に奪われてしまいました。

◆お客様もさることながら、そこで働く社員やパートのおばちゃんも
正直屋で買うことがないスーパーにまで落ちぶれてしまいました。

◆そこで、主人公は、何よりも大切なことは何かを考えに考え抜いた末に、
それは、「お客様に本当に喜んでいただくこと」であるというビジョンを
掲げるにいたりました。

◆そして、日本一のお客様思いのスーパーに何があっても生まれ変わろう
と決意したのです。

◆それからは、偽装に手を染めていた職人やマネージャー、調達先
からの猛反発に遭いながらも、偽装を良しとしない一部の社員や
パートのおばちゃんたちと一緒になってお客の声を真摯に聞き留め、
希望や要望を吸い上げ、たとえ誰が抵抗しようと、多少お店に
損が出ることになろうと、やらなければならないことに邁進するのでした。

◆この正直屋のビジネスモデルから学べるのは、

1.顧客志向・現場主義

2.情熱をもったリーダーの存在(主人公)と明確な
  ビジョン(こうあるべきという方向性)

3.既存の業務プロセスの見直しと改革(改善ではない)

4.社員のやる気の喚起

の4点です。

◆松林先生も「顧客満足(CS)の解説本を何冊も読むよりは、顧客志向の
入門編としては「スーパーの女」を見るのが一番ストレートでわかりやすい」
とおっしゃっております。

◆以前ご覧になった方も、エンタテイメント映画としてご覧になった時と
違い、このような観点から皆さんもぜひ一度ご覧になってみてはいかがで
しょうか?

◆ただ、本当に今すぐ見てほしい方々は、冒頭に記載した企業の経営者
ですね。 ぜひ正直屋のように再生してもらいたいと思います。

大江戸ビジネスモデル考 (その1)

◆1603年~1867年にかけて栄えた江戸時代は、これからの政治を考える際
に明治時代がよく引き合いにされるのと同じように、これからのビジネスモデル
を考えるにおいては大変参考になる時代であり、優秀なビジネスモデルの
宝庫であるといえるのではないかと思います。

◆現在の世の中で当たり前となっているビジネスモデルの多くが、その起源を
たどると江戸時代であることが多いのです。

◆徳川家康が関ヶ原の戦いに勝利をおさめた後、江戸開府の1603年を始期とし、
徳川幕府は徹底的な政局安定策をとり、諸大名や朝廷に対し徹底した法治体制を
敷くなどしました。

◆その結果、260年以上続く長期安定政権を確立し、「天下泰平」という
今でも使われることばが生まれるほどの平和状態を日本にもたらしました。  

◆こうした国内の長期安定的な生活基盤に加えて、対外的には鎖国をして
いたため、長崎出島を通じての一部の貿易以外は、豊富な国内市場のニーズ
に対応するニュービジネスが多く育ったのです。

◆ひるがえって現在の日本がおかれている状況をみると、グローバル
スタンダードな経済環境の中での企業活動を強いられており、どうしても目を
海外に向けて活動せざるを得ないし、海外からのビジネススタイルやビジネス
モデルの影響を受けざるをえなくなって来ています。 

◆ただ、忘れてはならないのは、この小さな島国には、広く教育を受けた
1億2千万人もの人間が相対的に平和に生活しており、ライフスタイルの多様化
に伴って、いろいろなサービスや製品、ソリューションを日々渇望している巨大
マーケットが存在しているということであります。  

◆今のこの平成の時代というのは、経済規模や人口規模などの差はあるとは
言え、江戸時代と何か多くの共通点があるように思えるのであります。 

◆従って江戸時代に生み出された数々のビジネスモデルを分析することによって、
日本人の持っている商機のルーツに触れることができるのではと思いました。

◆大江戸ビジネスモデルを探究することによって、これからの日本の市場
が求めているビジネスモデルの方向性を教えてくれるのではないかと考えた
のが、この大江戸ビジネスモデル考の主旨であります。

◆次回から何回かにわたって大江戸ビジネスモデルの事例をいくつかご紹介
していきたいと思います。

新車を売らない自動車販売店? 

◆どの企業も、自分たちのコアビジネスとして売りたいものというものがあって、
それを何とか売ろうとして日々躍起になっています。
だが、その売りたいものの品質や価格などに特に問題がないのに売れ行きが
伸びない時や、売ろうとすればするほど売れないといった時を迎えたときに、
どうするか?

◆その時に大事なのが、逆転の発想です。 
たとえば車を売りたいのであれば、車を売り込むなということです。

◆日経朝刊に興味深い記事が載っていました。
新車を一台も売らないで利益を出す自動車販売店があるそうです。
普通は、売りやすい新車の販売に力を入れるのが常識ですが、
トヨタ自動車系の販売店はちがいます。

◆ネッツトヨタ神戸は、国内市場縮小のなか、新車販売に苦戦していました。 
そこで、補修・点検サービスや中古車などの新車販売以外のサービスの充実
に軸をおいて、そこに利益の源泉を求めました。 

◆その結果、新車販売以外の利益を固定費で割った「固定費カバー率」は、
全国平均が78%に対して、120%に迫るようになり、新車販売以外の
サービスだけで十分固定費をカバーすることになりました。  
補修・点検サービスの充実が、結果として、新車購入の顧客の開拓も
可能となり、トヨタの中で優良販社として表彰を受けるにいたったのです。

◆車の展示台数を極力減らして、余ったスペースを別なサービスに生かす
という逆転の発想をとった販売店もあります。

◆ネッツテラス尼崎では、展示車をたった一台だけとし、余ったスペースには、
車検やオイル交換などを待つ顧客に対する喫茶スペースを設け、待ち時間が
長いサービスを取り込む策をとりました。
さらにすごいのはトヨタ車以外の補修・点検も取り込み、結果として地域
シェアを大きく伸ばしました。

◆これらの例は新車販売からいったん視点をはずして、それ以外に顧客が
求めているサービスに目を向けて顧客をつなぎ留め、最後に新車の販売増
を目指すという逆転の発想戦略であります。

◆価格戦略でも、視点を変えて成功した例もあります。 
通常価格戦略は新車販売価格が焦点になります。 

◆金融子会社のトヨタファイナンスは、逆に下取り価格をいかに高くするかに
注目しました。 
200万件の中古車オークションの取引データを分析し、下取り価格を
平均1割引き上げることに成功。 
新車価格と下取り価格の差額を圧縮したローンが好評となり、そのローンの
利用率は3倍になりました。 
 
◆また、IT活用の分野では、カーナビゲーション機能に逆の発想を用いました。
通常のカーナビは、顧客向けに一方的に渋滞情報などを一方的に発信しますが、
レクサスに搭載されているカーナビは、顧客からオペレーターに対して発信
できる機能をもちます。  
これにより、対面販売では不可能は24時間体制での顧客の声を収集して、
新しいサービスや新車開発などのマーケティング戦略に生かしています。

◆車の品質は一級品のあのトヨタでさえ、いろいろ知恵を絞り、発想を逆転
させることで、活路を見出そうとしているのです。

◆顧客は新車だけを買うわけではない。車を含めた周辺のサービスも含めて
買うのです。
売れない売れないと嘆いたり、うちの製品やサービスのラインナップにはない
からとか決めつけずに、この事例を参考にして、「逆転の発想」を行い、実行
してみては如何?

参考記事 日経071221 15面


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