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政府関係者は、今すぐマーケティングを学びなさい!

東日本巨大地震が発生して以降、懸命の復旧作業が続いておりますが、
いまだに復興への大きな道筋や、シナリオ、さらにはこれからの日本
のあるべき姿などの青写真が見えてきません。

政府関係者は、今こそ「マーケティング」を学んで、「顧客」である
国民に「ホールプロダクト」を示してください。

未だに日本政府からは、政府が考えているソリューションの全体像が
見えてきません。 今後日本はどのようなステップで、どんな青写真
の元に、何を実行して行こうとしているのかといった発信がなされず
にいます。 

その代わりに、被災地や福島第一原発の現場で行われている救援活動
状況ばかりが断片的に伝わってくるのみです。

今こそ政府は、国民あるいは世界に向かって、日本はこうなってい
く!という明確で強いメッセージを発する時期だと思います。

マーケティングには、サービスや製品を提供する「提供者」と、その
サービスや製品の提供を受けて、ベネフィットを享受する「顧客」
いう概念が存在します。

今、サービスや製品を提供する「提供者」を「政府」、そして、ベネ
フィットを享受する「顧客」を「国民」と置き換えて考えてみたいと
思います。

マーケティングの考え方の一つに、「ホールプロダクト」という考え
方があります。 顧客が期待するサービス・製品は、ひとつの価値だ
けで成り立っているのではありません。 いくつもの価値が複合して
機能して初めて顧客は満足するのです。 それを
「ホールプロダクト」
と呼んでいます。

「ホールプロダクト」は中心から外側に向かって「コアプロダクト」、
「期待プロダクト」、「拡張プロダクト」、「理想プロダクト」
の順
に4つの層をなして形成されています。

「コアプロダクト」というのは、顧客が抱えている課題・問題などを
解決するための中核となるベネフィットで構成されています。 顧客
が製品やサービスを購買する場合に必ず求めるものです。 例えばパ
ソコンの場合は、仕様通りのパソコンそのものです。

「期待プロダクト」というのは、顧客が購入する際、こうであるべき
だと考える製品・サービスのことで、顧客満足のためには最低限そろ
っている必要があるものです。パソコンの場合だと、液晶モニターは
当然ついているはずだと考えます。

「拡張プロダクト」というのは、コアプロダクトの機能を拡張する
ために準備された数多くの付属品やサービスのことです。 顧客の
購入目的を最大限満足させるために必要なもので、パソコンの場合
だと、プリンターや、24時間対応のカスタマーサービス受付、使い
方の勉強会などです。

「理想プロダクト」というのは、顧客に提供される価値の上限をさ
し、顧客がこれ以上の製品・サービスは求めることはないものです。

上記でわかるとおり、顧客がパソコンを買う目的は、パソコンとい
う物理的な箱を所有することが目的ではなく、快適に効率よく情報
を収集・加工し、仕事の能率を格段に向上させるための機能を買う、
つまりホールプロダクトとして買うのです。

例えば、ゴルフ場でプレーするのも、ボールを打つのが目的ではな
く、友達と楽しく自然の中でプレーを楽しみ、もっと親交を深めた
いということが目的であったりします。

ここで、今、日本国民は政府に対してどんなホールプロダクトを欲
しているのでしょうか?

筆者の勝手な考えで以下のようなホールプロダクトをデザインしま
した。

「コアプロダクト」は、マズローの欲求五段階説で言われる「欠乏
欲求」である安全の欲求からきています。 行方不明者の救助と放
射能汚染の拡大を食い止めて原発を安定した状態にし、津波や地震
の二次被害から解放され、ライフラインが復旧し当面の衣食住が満
たされた安全な環境の提供などであろうかと思います。

「期待プロダクト」
は、その上で、日本全体の電力需給不足や物資
の偏在を解消すべく十分な発電供給能力や流通・物流網の回復がな
され、製造業も生産再開を開始する状態、いわば安心できる環境の
整備・提供でありましょう。

「拡張プロダクト」は、その上で、日本の産業・経済・金融状況や
国民生活が震災前の状況に復帰し、海外から観光客や資本、ビジネス
マンなど多く戻ってきて、活況を呈することではないかと思います。

「理想プロダクト」は、この震災から日本全体が世界と一緒になって
一致団結して見事復興し、その経験やノウハウ・知見を生かして、震
災や津波災害、次世代エネルギー政策などの分野を中心に世界の平和
と安定に貢献し、尊敬と信頼を得る国になることです。

さて、マーケティングでは、このホールプロダクトをデザインし、発
信すればそれで終わりではなく、時間と共に市場が推移していくにつ
れて、それぞれ四つのプロダクトを市場に出していくタイミングを検
討しなければなりません。

タイミングを間違えると、ホールプロダクトは市場から受け入れられ
ません。

まず、最初の「コアプロダクト」は、初期市場に提供され、その対象は、
通常極めてセグメンテーションされた狭い市場セグメントのピンポイ
ントの顧客に対して集中的に提供します。 今回の地震の場合、被災
地への集中提供となります。

その後、市場が時間と共に推移し、メインストリーム市場と呼ばれる
マス市場に移行するにつれて、提供する顧客の対象領域を広げて、
ホールプロダクトの層を外側に拡大していきながら提供します。

今回の場合「期待プロダクト」は、首都東京を含む東日本地域の市民
と企業群となり、「拡張プロダクト」は、日本国民全員であり、最後
「理想プロダクト」は、日本の復興と世界の安定を願っている全世
界の国々の政府や組織、人々となります。

もちろん、個別の具体的なソリューションは、さらに顧客の属性によ
って(年齢や企業規模など)で、セグメンテーションされなければな
りません。

ここで一つ重要な点は、初期市場とメインストリーム市場の間には、
キャズムと呼ばれる大きな溝が存在しており、初期市場で成果をあげ
ることができなかったホールプロダクトは、キャズムという奈落の底
に転落してしまい、そのホールプロダクトはメインストリーム市場に
移行できずに、そこで終わりとなってしまうという点です。

従って、今回も「コアプロダクト」を如何に的確に震災現場に提供し
成果をあげられるかどうかが、今後のホールプロダクトの戦略に大き
く影響を及ぼすことを理解する必要があります。

ホールプロダクトという呼び名でなくても結構ですから、日本政府に
は、今後日本が歩んでいく道筋とその先にある姿を、国民や世界に
一刻も早く提示頂きたいと思います。


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