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日本一のお客様思いのスーパー

◆ここ連日中国からの農薬混じりの餃子問題でゆれにゆれています。
加ト吉やJTの信用問題までに発展しています。

◆昨年から繰り返される食品への偽造、偽装、安全問題。
不二家、ミートホープ、白い恋人、赤福、船場吉兆、マクドナルド
などなど・・・。
あまりにも多すぎて、一つひとつがどうだったのか、思い出せないくらいです。

◆毎年恒例の京都清水寺の僧侶が書く「今年の漢字」の昨年版は、
情けないことに「偽」でした。
偽装、偽証、偽計の「ギ」だそうです。

◆こういう状況を見ていますと、企業経営は、「顧客志向」、「現場主義」である。
などと昔からよく言われますが、そんなものいったいどこに行ってしまったのかと
思ってしまいます。

◆今年のお正月に、近くのビデオレンタルショップに行って、故伊丹十三監督の
「スーパーの女」という映画のDVDを借りてきて観てみました。

◆私が師事している松林先生というコンサルタントの方から、「顧客志向とは何か
という本質を教える素晴らしい映画だからぜひ観るといい」と薦められたから
でした。

◆松林先生は、製造業の業務改革などに特化したワクコンサルティング(株)
という会社の社長をされており、日々顧客志向とは、現場主義とはなんぞや
といったことを追及されておられます。   ワクコンサルティングのWEBサイト

◆この映画を観て、びっくりしました。
1996年の作品なのでもう10年以上も前に作られたのですが、そこに描かれ
ているストーリーは、まさに昨今問題になっている食品偽装に真正面から
取り組んで、真の顧客志向を追及するスーパーの物語が描かれておりました。

◆スーパーの名前は「正直屋」。
宮本信子演じる主人公が、あるとき近隣にオープンした安売り日本一
を歌い文句にする「安売り大魔王」に客を取られてしまい、そこに対抗
するために、幼馴染の社長を支えながら、お店の改革に着手し、
やがて遠のいていたお客を見事取り戻すというストーリーです。

◆主人公が支援を開始したときの正直屋は、名前とは全く正反対の
オペレーションを行っていました。

◆たとえば、業界の常識だといって、前日の売れ残りの肉や魚をパック
し直したり(リパック)、日付を偽装したり、高級肉に安い肉を交ぜて
かさを増してごまかしたりと、消費者がまさかと思うようなことを
平気で行って、儲けることばかりを優先していました。

◆儲け至上主義が偽装を生み、結局儲けるどころか、大事なお客様
を競合に奪われてしまいました。

◆お客様もさることながら、そこで働く社員やパートのおばちゃんも
正直屋で買うことがないスーパーにまで落ちぶれてしまいました。

◆そこで、主人公は、何よりも大切なことは何かを考えに考え抜いた末に、
それは、「お客様に本当に喜んでいただくこと」であるというビジョンを
掲げるにいたりました。

◆そして、日本一のお客様思いのスーパーに何があっても生まれ変わろう
と決意したのです。

◆それからは、偽装に手を染めていた職人やマネージャー、調達先
からの猛反発に遭いながらも、偽装を良しとしない一部の社員や
パートのおばちゃんたちと一緒になってお客の声を真摯に聞き留め、
希望や要望を吸い上げ、たとえ誰が抵抗しようと、多少お店に
損が出ることになろうと、やらなければならないことに邁進するのでした。

◆この正直屋のビジネスモデルから学べるのは、

1.顧客志向・現場主義

2.情熱をもったリーダーの存在(主人公)と明確な
  ビジョン(こうあるべきという方向性)

3.既存の業務プロセスの見直しと改革(改善ではない)

4.社員のやる気の喚起

の4点です。

◆松林先生も「顧客満足(CS)の解説本を何冊も読むよりは、顧客志向の
入門編としては「スーパーの女」を見るのが一番ストレートでわかりやすい」
とおっしゃっております。

◆以前ご覧になった方も、エンタテイメント映画としてご覧になった時と
違い、このような観点から皆さんもぜひ一度ご覧になってみてはいかがで
しょうか?

◆ただ、本当に今すぐ見てほしい方々は、冒頭に記載した企業の経営者
ですね。 ぜひ正直屋のように再生してもらいたいと思います。

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コメント

なるほど。週末にでもビデオ屋さんへ走ります。

先月NYで開催された97TH ANNUAL CONVENTION & EXPOで、アメリカを中心とした世界の小売業とベンダーのCEO,VicePresident等のセッションを聞き、各社ソリューションの展示を視察してきました。

http://events.nrf.com/annual08/public/enter.aspx

そこで出た共通のキーワードは、
「Green」「sustainability」(エコ)
「Virtual」(Web2.0)
です。

エコへの取り組みで有名なスーパーの視察もしてきました。(WholeFoodsMarket)
http://www.wholefoodsmarket.com/
とにかく顧客満足への徹底した取り組みが
ベースとなっているスーパーです。

また、Virtualについては、各メーカー、小売が
こぞって、セカンドライフやFacebookなど
Web上でのプロモーションを行っているという
内容でした。

子供向けセカンドライフのようなサイトもあったり、韓国ではケータイでマクドナルドの商品が
買えたり。

全体を通して参加して思ったのは、
原点へ再帰している、つまり
サービスを充実させることで「顧客中心」という、
ものを作って売る立場では当たり前で、でも一番重要な視点へ戻ってきているということです。

簡単にものが売れなくなってきた今だからこそ、
この原点に立ち戻ることが重要なのではないかと
思いました。

H.I | 2008年2月 4日 22:20

H.Iさん。

貴重な出張レポートの投稿ありがとうございました。

まさにI.Hさんおっしゃるように、米国のトレンドは流通小売業の原点への
回帰志向があるようですね。

小売業界の発展過程として、よく例に出されるのが、
「地元近所のおじさんストア」→ 「百貨店」→「量販店」→「専門店」
という流れです。

この流れが正だとすると、次は親しみのもてる地元おじさん
ストアモデルが原点となるように思います。

「スーパーの女」の正直屋じゃないですけど、消費者の声や細かい
要望を吸い上げて、その個別の消費者に対して、サービスや商品を
カストマイズして迅速に提供するビジネスモデルが台頭してくると
思えます。

それって、私が幼いころ家の勝手口によく来ていた御用聞きモデル
とか、もっと遡ると江戸時代に繁栄した行商人モデルとか。

人と人との顔が見える、心の通ったやり取りというあたりに商機が
あるのかもしれませんね。

三宅 信一郎 | 2008年2月 5日 15:15

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