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連載 営業マン小説 「商社マン しんちゃん。 走る!」 (10)

「商社マン しんちゃん。 走る!」
~営業マン小説:高度成長からバブルを駆け抜け、さらなる未来へ~

筆者の商社マン生活の実体験を小説風にしました。


「おう!宮田か。元気にしてるか? 
今日もう終わるけど、久しぶりに飲みに行かんか?」

入社直前の富士山の合宿以来、大変気が合う同期仲間の一人であった。

2人は会社近くの居酒屋に入って、まずはビールを頼んで、乾杯をした。


「宮田はまだましだよ」

森永が言った。

「俺なんか配属以来アルミ漁船を漁師に売って来いだぜ。
猟師の家の前で待ち伏せして、先輩と一緒に代金取立てもあった。
{支払い御願いします}と言いながら先輩と一緒に頭下げると、決まって
{次の漁まで待ってけろ。支払い条件は大漁翌月末現金払いだったべな}だ。
実際は契約書で納入翌月末現金払いとちゃんと規定されているのにだよ。
いつ大漁になるかなんてわからないよ。」

森永は続けた。

「ある先輩なんかは、納入したアルミ漁船の性能が契約通りのものが出なかったんだ。
その時怒った猟師さんが、

≪おれらは命張って漁に出てんだ!こんな船で漁に出られるか!この野郎!
海がどれだけ危険な職場か、お前らサラリーマンにはわからんやろ!≫

と叫びながら、その先輩をその船でしけの海に連れ出し、そのまま先輩は
海に投げ込まれ、危うく溺れ死ぬとこだったこともあったと言っていた。
また、違う先輩は魚群探知機の営業で、性能が出ないと怒った漁師さんに

≪海の底行って本当に魚がいるか見てこいや!≫

といって、投げ込まれたりしたこともあったろうだ。

それに比べれば、お前の担当している日本非鉄金属は
業界トップの大手だし、そこまでえげつなくはないだろうよ」

宮田は、森永の話を聞いてげらげら笑っているうちに、皆同じようなことを
やっているんだと思うとなんだかホッとし、本音で話し合える同期というのは
実にいいものだとつくづく思っていた。

それと、商社も結構面白いなと思い始めていた。

外から見る偶像と実際その中で体験することが違うのはどの世界でも同じである。

ある意味そのギャップが大きい職業ほど大変だが、その分それに携わった人間
にしか分からないやりがいというものがあるのだろう。

例えば、医者、弁護士、パイロット、プロ野球選手、経営コンサルタント、
女子アナ、キャビンアテンダントなどなど。

見かけは華やかで皆の憧れの仕事だと一般的にはそう言われているが、
その業務は外部からは垣間見ることができないほどプロフェッショナルとして
大変厳しいものがあり、だけどもその分やりがいも多いのであろう。

商社マンもそれと同類かなと宮田は思った。

「それなら一度おれの先輩の柴田課長代理を紹介してやるよ」

宮田が、機械のカタログを説明してもお客様から全く相手にもしてもらえず、
これから先何をどうやったらいいのか悩んでいると打ち明けたとき、
森永が言った。

「うちの課は、アルミニウム関連のありとあらゆる製品の販売をしている。
お前が担当している日本非鉄金属の製品も全世界に輸出してるぜ。
柴田さんはその道のプロだ。
何かいいヒントをくれるかもしれない」

同期の救いの手がとてもありがたかった宮田は、その後酒がどんどん進み、
酔った二人は、まだ総合商社を理解していない新米商社マンのくせに
これからの大日本商事はどうあるべきだとか、自分の実現したい夢や
ビジネス展望などさんざん持論を展開しながら、夜更けまで酒を楽しんだ。

しかし最後のほうは、同期入社のどの娘がかわいくて、どの部署にいるのかとか、
その娘に彼氏がいるかどうかなどの話題に終始していた。

次回に続く

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